外来のご案内 Outpatient care

物忘れ外来

「認知症」あるいは「ボケる」という言葉は、誰もが嫌いであり、一生縁が無ければ良いと思う言葉です。しかし、大変残念なことに世界で最も高齢化が進んだ日本においては、多くの高齢者に認知症の診断が下されつつあります。その認知症においては、末期には多彩な症状が現れますが、多くの場合に最初に見られる症状は「物忘れ」です。

桜十字八代リハビリテーション病院では「物忘れ外来」を開設し、ご自分やご家族の物忘れに関する心配に対応させて頂きたいと考えております。

軽度認知障害と認知症

軽度認知障害は認知症の前段階とされています。認知症は現在、完全な予防法や根本的な治療法がみつかっていません。しかし、軽度認知障害は認知症そのものではなく、認知症になりうるリスクを発見するための概念です。軽度認知障害の診断を受けた人すべてが認知症となるわけではありませんし、充分に健常な状態に回復する可能性も決して低くありません。

一方で、軽度認知障害は健康上、生活上において何らかのリスクを抱えている状態でもあります。軽度認知障害は、そうした生活スタイルを変えるための「黄色信号」と考えるとよいでしょう。たとえその後認知症に移行したとしても、軽度認知障害という早期のうちから認知症とともに生きる備えに取り組めることは大きなメリットなのです。つまり、軽度認知障害という診断を受けることは、その後認知症になってもならなくても、生活の質を高めることができるものだという認識を持ってみましょう。

軽度認知障害の症状例

  • 会話をしている中で、同じ話をすることが多くなった。
  • これまで忘れなかったようなものを忘れている(食べたものや人の名前、暗証番号など)。
  • お金の計算やスケジュール管理ができなくなった。
  • 料理の味付け、仕事や車の運転などの様子が変わった。
  • 好きだった趣味活動をしなくなった。
  • ドラマや読書を楽しめなくなった。
  • 頭がぼんやりしてすっきりしない。
  • 疲れやすく元気が出ない。
  • やる気がわかない。

6つの認知領域とその障害例

複雑性注意

通常の作業に時間がかかる、誤りが増える、複数の刺激のある環境で困難が増す、持続性注意、選択性注意、分配性注意の障害等

実行機能

多くの段階をふむ計画を完了するのが困難となる、整理、計画、意思決定に努力を要し、疲労を感じる、ワーキングメモリーの障害、フィードバックの障害、柔軟な対応が困難、会話の変化についていくのが困難等

学習と記憶

同じことを繰り返し言う、買い物のリストを思い出せない等

言語

喚語困難、流暢性の障害、文法の誤り、理解の障害等

知覚・運動

道に迷う、空間作業、描画、模写、パントマイムが困難等

社会的認知

共感の減少、抑制の減少、人格変化、他人の思考、欲求、意図や体験を考慮する能力の障害等

認知症の診断基準

  • 1つ以上の認知領域が以前の機能レベルから低下している。
  • 認知機能の低下が日常生活に支障を与える。
  • 認知機能の低下はせん妄のときのみに現れるものではない。
  • 他の精神疾患(うつ病や統合失調症等)が否定できる。

認知障害を示す主な疾患

認知障害を示す主な疾患として、代表的なものはアルツハイマー型認知症や血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症などが挙げられます。また可逆性(元の状態に戻ること)の疾患として甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、ビタミン欠乏症やてんかんなどが挙げられます。

当院では、確かな知識と経験を有する専門医による問診(病歴や状態を詳しく聞き取ること)・診察・最新鋭の検査機器(CTやMRI)による検査を行います。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は早期発見・早期対応であれば、認知症を示す疾患のうち可逆性の疾患は、早期からの薬物療法による進行抑制で治療を確実に行うことが可能です。
また、本人が変化に戸惑う期間を短くでき、その後の暮らしに備えるために、自分で判断したり家族と相談することもできます。家族等が適切な介護方法や支援サービスに関する情報を早期から入手可能になり、病気の進行に合わせたケアや諸サービスの利用により認知症の進行抑制や家族の介護負担の軽減ができます。

本人・家族で出来る生活改善
コリンエステラーゼ阻害薬を服用すると症状の進行が緩やかになりますが服用を途中で止めることで症状の進行が進みます。

健忘型軽度認知障害

記憶障害の訴えが本人または家族から認められているが、日常生活動作・全般的認知機能は正常、年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する状態のことを健忘型軽度認知障害といい、これは認知症ではありません。ただし軽度認知障害に関する19の縦断研究を検討した結果、放置すると症状がすすみ、平均で年間約10%が認知症に進展します。

うつ病と認知症の関係

うつ病とアルツハイマー型認知症には関係があります。認知症との鑑別の必要がある「独立した疾患」としてのうつ病、今後認知症が出てくるかもしれない「認知症に先行するうつ状態」、今認知症があるかもしれない「認知症の症状としてのうつ状態」の3つが挙げられます。

うつ病 アルツハイマー型認知症
発症 週か月単位、何らかの契機 緩徐
物忘れの訴え方 強調する 自覚がない、自覚があっても生活に支障がない
答え方 否定的答え(わからない) つじつまをあわせる
思考内容 自責的、自罰的 他罰的
失見当 軽い割にADL障害強い ADLの障害と一致
記憶障害 軽い割にADL障害強い/最近の記憶と昔の記憶に差がない ADLの障害と一致/最近の記憶が主体
日内変動 あり 乏しい
うつ病とアルツハイマー型認知症の臨床的特徴

せん妄と認知症の関係

せん妄は、意識水準の低下に、妄想、錯覚、注意力や思考の低下が加わること起こる急性の異常な精神状態を指します。高齢者に多い疾患で認知症と間違えられることも多い症状です。しかし、早期に診断し適切な処置をとることで改善することもあるため、適切な診断と治療が大切です。

せん妄の原因は多岐に渡り複雑ですが、アルコール、薬物または薬物中毒、感染症(特に肺炎と尿路感染症)、脱水状態および代謝異常、感覚遮断(環境変化)、心理的ストレス、脳の病変などが挙げられます。他にも薬剤の副作用として抗パーキンソン病薬、抗コリン薬、抗不安薬、抗うつ薬、循環器用薬(ジギタリス、βブロッカー、利尿薬)、H2受容体拮抗薬などが挙げられます。

せん妄 アルツハイマー型認知症
発症 急激 緩徐
日内変動 夜間や夕刻に悪化 変化に乏しい
初発症状 錯覚、幻覚、妄想、興奮 記憶力低下
持続 数時間~1週間 永続的
知的能力 動揺性 変化あり
身体疾患 あることが多い 時にあり
環境の関与 関与することが多い 関与ない
せん妄とアルツハイマー型認知症の臨床的特徴

検査と治療

認知症を発症しても自分らしく生きていくためには、症状に合わせた適切な検査と治療が重要です。問診・病歴・既往歴・身体的診察、認知症の検査、その他認知障害を来す疾患の検索を行います。治療には薬物による治療の他、運動トレーニングや認知機能トレーニング、食事療法などを組合せて行います。

  • 改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
  • ミニメンタルステート検査(MMSE)などの認知機能を計測する質問検査
  • 脳萎縮を計測できるVSRAD法

医師紹介

西 徹

担当医師/専門 脳神経外科

人は年を取ると共に、忘れっぽくなります。「物をどこに置いたか分からなくなる」「今、何をしようとしていたか分からなくなる」など、誰もが経験したことがあると思います。そのような加齢による生理的な物忘れと認知症の初期症状としての物忘れの区別は大変難しいものですが、色々な検査や診察により、ある程度の診断を下すことが出来る時代になっています。

認知症の特効薬は未だ開発されてはおりませんが、ある種の薬や運動療法などで進行を遅らせることが出来る場合があります。いずれにしても、早期に診断がつくことが重要です。

経歴

  • 済生会熊本病院 副院長
  • 済生会熊本病院 部長(脳卒中センター 脳神経外科)
  • 熊本大学 脳神経外科 臨床教授
  • Best Doctors in JAPAN 2020-2021

所属学会等

  • 日本脳神経外科学会
  • 日本脳神経外科コングレス
  • 日本間脳下垂体腫瘍学会
  • 日本癌学会
  • 米国癌学会
  • 米国遺伝子治療学会

資格・学位

  • 医学博士
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本脳卒中の外科学会技術指導医